粉塵や蒸気・ガスなどの有害物質をフードから吸い込み、屋外へ排出させる排気装置。有害物質が発生する場所では欠かせない装置です。ここでは、排気装置の基礎知識をまとめています。
局所排気装置には、1年に一度の点検が義務付けられています。労働安全衛生法で義務付けられており、遵守できない場合には罰金が科せられるケースもあります。点検を行うのに法律上資格は求められていないものの、正しく点検・メンテナンスを実施するには一定の知識と技術が必要です。メーカーによっては点検・メンテナンスサービスを行っている会社もあるので、相談してみることをおすすめします。
排気装置と換気扇は、どちらにも室内の汚染された空気を排出する役割があります。換気扇が部屋の空気を入れ替えるのに対して、排気装置は排出することが主な役割です。粉塵やガスなど有害物質が発生する工場や作業場では、排気装置の設置が義務付けられています。換気扇と排気装置、どちらを設置すればよいか分からないときは、業者に相談するとよいでしょう。
ピンポイントに有害物質を排出する「局所排気装置」を設置するときは、作業環境や発生源を考慮したうえで、適した装置を選ばなければなりません。地域の条例で排気方法が定められているケースもあるので、事前に確認が必要です。また、設置する際には、労働基準監督署に届け出を提出する必要があります。
排気装置に取り付けるフードは、さまざまな種類があります。囲い式フードは、有害物質の発生源を囲い込むように取り付けるフードです。カバー式を始め、複数の種類があります。外付け式は、有害物質と周辺の空気をまとめて吸引するフードです。囲い式フードと比較して風量が求められます。そしてレシーバー式は、気流に沿って有害物質を吸い込むフードです。空気よりも比重が軽い有害物質の吸引に適しています。
塗装を行った際の発生する有害臭。さまざまな有害物質を含んでおり、直接嗅いではいけない薬品も中にはあります。作業員の吸引を防ぐためには、作業ブースの設置が必要不可欠です。排気装置を導入するのはもちろん、強制換気・陽圧も行いましょう。また、塗装ブースは広さにも注意し、有害物質が飛散しないようにする必要があります。
塗装の時に出る有害臭は排気装置で解決できる?
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有機溶剤は揮発性が高く、他の物質を溶かす性質がある薬品です。排気装置の設置が義務づけられており、多数の薬品が規制対象になっています。特に有機溶剤は中毒症状が危険で、万が一吸い込んでしまうとめまいや頭痛、吐き気などの症状が起こるリスクも。健康への影響が大きいため、作業員が吸引しないよう対策が求められます。
排気装置の設置が義務づけられている有機溶剤とは?
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排気装置の運用にあたっては、トラブルに注意が必要です。フィルターの目詰まりによる排気力の低下、工場外への悪臭や異臭などのトラブルを起こすことがあります。トラブルを予防する基本の対策は、適切かつ定期的なメンテナンスの実施です。メンテナンスの依頼先は、実績や信用などをチェックして慎重に選ばなければなりません。
空気中の粉塵などを吸引する機器を集塵機、床に落ちているゴミを吸引する機器を掃除機といいます。目的が異なるため、両者は特徴も異なります。例えば、風量は集塵機、吸引力は掃除機のほうが優れているといえるでしょう。また、容量は基本的に集塵機のほうが大きくなります。違いを理解したうえで、使用環境などにあわせて選ぶことが重要です。
制御風速は、有害物を飛散させないため局所排気装置に求められる風の速さです。具体的な数値は、有機溶剤中毒予防規則などに定められており、有害物の種類や排気装置のフード形状などで異なります。したがって、同じ有害物であっても制御風速は異なることがあります。作業員を有害物から守るため、詳細を理解しておかなければなりません。
局所排気装置の抑制濃度とは、作業者のばく露濃度を安全水準に保てるとして定められた濃度です。抑制濃度の測定は対象物の発生源付近と、発生源から0.5~1m離れた位置で行われ、採取した対象物を分析します※。事業者が特定化学物質などを取り扱う場合、作業者の安全を守るためにも抑制濃度を把握しておく必要があります。
※参照元:尾北環境分析株式会社_【局所排気装置】抑制濃度について(https://www.bkb.co.jp/topics/suppression-concentration-test-flow/)
局所排気装置を設置するときには届出が義務付けられています。届出に記載する内容は、図面・適用書・計算書・設置届など、漏れのないように記載しなければなりません。提出期限もあるので、提出を忘れないように注意しましょう。局所排気装置の届出は排気装置の設置業者に依頼することもできるので、相談する方法もあります。
局所排気装置がないことで、重大な事故が起きるケースがあります。実際に、作業者が意識を失って倒れてしまったり、過敏性肺炎と診断されたり、肝機能障害を発症してしまったりといった事故が報告されています。ここでは、局所排気装置がないことで起きた事故事例をまとめていますので、事故を防ぐための参考にしてみてください。
局所排気装置にフランジは必要な場合もあります。吸引力が弱い場合、フランジ効果を狙って付けるのが理由です。たとえば、フード開口面の周囲にフランジを取り付けたとします。そうすると、前面からの吸込量が増えるのです。
また、フランジ付きフードが床や壁、カーテン、テーブルなどに接していれば、その方向からの気流をストップできます。そのため、吸込量が増えるのです。局所排気装置の吸引力が弱いと、簡易的な対策として検討してもいいでしょう。
排気装置の点検に、資格は不要です。ただし、局所排気装置等定期自主検査者研修コースの修了が求められます。局所排気装置やプッシュプル型換気装置及び除じん装置等では、1年以内ごとに1回、自主検査が法令で義務付けられているのです。
検査をするのも、正常な状態を理解し、問題があれば対策をしなければなりません。そのため検査担当者には必要な知識や技術が必要です。その知識や技術を学ぶのが、局所排気装置等定期自主検査者研修です。ただ、受講要件も設定されています。
局所排気装置と安全キャビネットは、保護対象といった目的や気流も違います。リスクを封じ込むための装置という点では同じです。局所排気装置は、有毒ガスを屋外に排出して、作業者や室内循環の保護を目的としています。
安全キャビネットは、ライフサイエンス分野で使われる装置です。作業者を、バクテリアやウイルスといった病原体や細菌などから守ります。局所排気装置は室内の空気をダクトから屋外に排出し、安全キャビネットは、HEPAフィルターを通って、室内に循環排気、または屋外に排気します。
排気装置の設置をする際、「なるべく早く施工を終わらせて、作業環境を整えたい」と考える人が多いでしょう。その希望を実現するためには、あらかじめ設置までの流れを把握しておくのが重要です。
特に問い合わせ時には作業箇所や作業内容などについて詳しくヒアリングされることが多いため、事前に集めておきたい情報なども紹介しています。
空気清浄機には、空気中の汚れやほこりを除去するなどの役割があります。一方で、局所排気装置には汚れやほこりを除去するだけでなく、より微細な有害物質まで排出可能です。では、空気清浄機は局所排気装置の代わりにはならないのでしょうか。
以下のページでは、空気清浄機と局所排気装置の違いなどについてまとめています。
職場に排気装置を設置する場合、空気の対策が欠かせない企業は補助金制度の利用が可能です。補助金制度には補助金と助成金の2種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。また、いくら補助金制度を利用したいからといって、そもそも排気装置の設置に対する補助を行っていなければ申し込みすらできません。そのため、適宜申込可能な制度があるかを確認するのも重要です。
排気装置を設置するときに使える補助金や助成金はある?
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排気口は、空気清浄機などとともに排気装置を構成する要素のひとつです。主な役割は、空気清浄機によって浄化された空気を施設内から屋外へ排出することです。設置にあたっては、いくつかのルールが設けられています。ここでは、排気装置における排気口の役割や排気装置を設置するときに守らなければならないルールなどを解説しています。
排気装置はダクト・フード・空気清浄装置・ファンなどで構成されます。ダクトの主な役割は、吸引した有害物質を含む空気を排気口へ送ることです。設置にあたっては、できるだけ距離を短くすることやベントを減らすことなどが求められます。ここでは、排気装置におけるダクトの役割とダクトの設置にあたり気を付けたいポイントを解説しています。
環境基本法に基づき、地域の類型に応じた騒音の環境基準が定められています。例えばAA地域における基準値は昼間50デシベル以下、夜間40デシベル以下です。排気装置の設置にあたり騒音に注意しなければなりません。騒音はサイレンサーや防音材の設置で対処できる可能性があります。騒音の環境基準と排気装置の騒音対策について詳しく解説します。
空気清浄装置は排気装置を構成するパーツです。主な役割は、フードから取り込んだ空気を排出する前に清浄化することといえるでしょう。空気清浄装置は、気中の有害物質が主に粉塵のときに用いられる除塵装置と、ガスのときに用いられる除ガス装置に分かれます。ここでは空気清浄装置の概要、種類などを解説しています。
排気装置の空気清浄装置(除塵・除ガス装置)
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排風機は排気装置の動力源です。圧力差を生み出して、フードから空気を吸い込み、排気口から空気を排出します。空気がダクトを通過するときに生じる圧力損失を補うために必要です。排風機は空気の流れにより軸流式と遠心式に分かれます。ここでは、排風機の役割と排風機の設置時に注意したいポイントを解説しています。
局所排気装置は作業者が有害物質を吸い込まないように発散箇所で有害物質を吸引する装置、全体換気装置は清浄な空気と汚染された空気を混合させて希釈する装置です。全体換気装置は、有害物質を完全に取り除くわけではありません。ここでは両者の違いと選択のポイントを解説しています。
排気装置は、作業で発生したさまざまな物質を吸い込みます。粉じん障害防止総合対策においても有効で、発生した粉じんを作業者が吸い込む前に排気装置が吸い込むことで、作業者の健康を守る役割も果たしてくれます。粉じん障害防止総合対策のためにも、設置するべき排気装置の種類や位置、大きさなどを見直してみるとよいでしょう。
粉じん障害防止総合対策における排気装置の役割とは?
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排気装置は、深刻な環境問題の一因となっているVOC排出の削減にも役立ちます。適した排気装置を選択することがポイントです。排気装置の役割をチェックし、地球のために、そして人々の健康のために、VOC排出削減に積極的に取り組みましょう。
プッシュプル排気装置は、発生させた気流によって有害物質の発散源から発散するヒュームを捕捉して、吸い込み側のフードに取り込んで排出するという仕組みです。動画撮影機能により、作業を記録したトラブルの原因究明に役立ったりするため、今導入を検討する企業が増えています。どのようなプッシュプル排気装置が適しているかは、業者に相談して決めるとよいでしょう。
石綿飛散防止対策において、隔離された作業場内の空気が交換して石綿濃度を低減させる、作業場内を常に負圧に保つことで、汚染された空気を外に逃がさない、といった主に2つの役割を果たしてくれるのが、排気装置です。さまざまな種類がある排気装置の中から、石綿飛散防止対策に適合する排気装置を設置しましょう。どんな排気装置を設置するべきかわからないときは、業者に相談することをおすすめします。
局所排気装置の設置は、有機溶剤業務において必要不可欠です。しかし例外となる規定があるため、業務内容によっては設置をしなくても良いケースがあります。どのような場合に適用除外となるのか、そして適用除外になる範囲はどこまでなのか、詳しく見ていきましょう。
排気装置の展示会では、装置を製造・販売している会社の担当者から直接話が聞けるため、どんな点が装置の特徴なのか、どんなシーンでの利用に適しているのかなどが確認できます。パンフレットやカタログよりも、実物を見ることでより設置のイメージがわきやすいでしょう。排気装置の導入・設置で悩んでいる際は、ぜひ一度展示会に参加してみてください。
マイクロバブルを活用した排気装置は、マイクロバブルによって臭気の元となる物質が分解されるため、臭いや物質を直接外に出すことなく空気をきれいにできます。有機系溶剤やパテといった粉じんの捕集、塗料ミストの清浄化にもマイクロバブル排気装置が役立てられており、フィルターなどを取り付けないため排気装置の維持管理がスムーズです。
排気装置のフィルターは、排気装置に取り付けて空気をきれいにする役割があります。自然発火を防止する難燃性のものや「塗料適応」など、塗料ミストの清浄化に役立つ機能を搭載したフィルターも販売されています。すべてのフィルターが同じ性能ではないため、設置場所や排気装置の目的に適合するフィルターを選び、取り付けることが大切です。
排気装置の設置場所は、周辺環境や通行人に影響せず通風性が確保できるような場所を選ぶ必要があります。装置の設置場所は屋内外を問わず、影響を最小限にできる場所を検討しましょう。設置工事の前には役所への届け出が必要で、図面なども必要になります。迷わずに設置工事を終えたい場合は、専門の業者への相談も検討してみてください。
排気装置における排気量の計算では、フードが外付け式または囲い式のどちらになるかで計算式が変わります。外付け式では開口面から発散源までの距離が短いほど効率的になり、囲い式は開口面積が小さくなるほどフードを効率的に使えるようになります。手順を計算する前に発散源やフードの型式を決め、設置に適した位置を決めましょう。
ミストコレクターとは、オイルミストと呼ばれる潤滑油の粒子を捕集する装置です。空気中のオイルミストは室内外のあらゆるものに付着し、直接吸い込むことで呼吸器系への悪影響も考えられるため、健康被害を防ぐ意味でもミストコレクターが活躍しています。電気式・慣性衝突式・渦流分離式の3タイプから設置環境に適した装置を選びましょう。
燃焼式排気装置(RTO)は蓄熱式脱臭装置とも呼ばれ、排気処理装置の一種です。環境法によって排出規制の対象となっている揮発性有機化合物(VOC)を効果的に処理できる装置ですが、有機シリコンやタールのような高沸点化合物などは触媒機能を低下させるおそれがあり、窒素を含む物質は臭気を発生させるため、燃焼する物質によっては注意が必要です。
燃焼式排気装置(RTO)のメリット・注意点
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それぞれ排気装置の設置場所が違えば、機器の導入の際に検討するべきポイントも変わってきます。ここでは「製造現場」「研究現場」「塗装現場」それぞれの設置場所に合わせて、排気装置メーカー3社をご紹介します。
導入を考えている場所と排気装置の特徴を見比べて、自社に合った排気装置選びの参考になさってください。