有害な化学物質などから労働者の安全と健康を守る排気装置の設置は、作業環境に必須です。そのため、法律で義務付けられている場合が多いのが特徴です。
ここでは主な法律として、「労働安全衛生法」、「粉じん障害防止規則」、「有機溶剤中毒予防規則」の3つをピックアップしてご紹介していきます。
労働安全衛生法とは、労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境を作るための法律です。その広義な目的と、様々な職場環境に対応するために、広範囲で膨大な条文が存在しています。
事業主は労働者のために、様々な措置を講じなければなりません。排気装置もその1つに含まれます。
有害な化学物質などが発生する作業環境である場合、その危険物や有害物による健康障害や労働災害を防ぐために、排気装置などの設置が必須となります。
粉じん障害防止規則とは、粉じんにさらされる労働者の安全と健康を守るための条文です。
粉じんを吸引することで発症する「じん肺」といった健康被害を防ぐために、事業主は、粉じんを「発生させない」、「拡散させない」、「吸引させない」対策を講じなければなりません。
粉じん作業全般を指す「一般粉じん作業」と、特に屋内で機械を用いた粉じん作業を指す「特定粉じん作業」で、必要な措置が異なるのがポイントです。
また、令和3年4月1日(一部は令和4年4月1日)から、ずい道建設工事の粉じん濃度の測定とその対策について改正がなされるなど、労働者の安全と健康を守るために、規則が改善され続けています。
有機溶剤中毒予防規則とは、定められた54種類の「有機溶剤」の安全基準を定めた省令となります。
有機溶剤とは、ほかの物質を溶かす性質を持つ有機化合物のことを指します。揮発性が高いものが多いため、蒸発して気化し呼吸を通して吸収されてしまったり、油脂に溶けて皮膚から吸収されてしまうことがあります。
そのため、有機溶剤を扱う作業環境において、労働者の中毒症状などの予防のために、労働安全衛生規則にプラスしてさらに細かく義務を規定したものが、有機溶剤中毒予防規則となります。
「プッシュプル型換気装置」とは、作業者が汚染された空気を吸入しないために設置される装置です。
似たような装置として、局所排気装置(外付け式)がありますが、こちらの装置はできるだけ有害物質の発散源に近い場所にフードを設けることが必要であるために、換気できる区域が狭くなるという面があります。
対してプッシュプル換気装置の場合には、有害物質の発散源を挟む形で吹き出し用と吸い込み用の2つのフードを設置し、吹き出しフードから吹き出した空気によって発散した有害物質を包み込んで、吸い込み口まで運んで吸引します。「吹き出し(プッシュ)」、「吸い込み(プル)」という2つの性質を利用することから「プッシュプル」という名前となっています。
このプッシュプル換気装置には、さまざまな性能要件が定められています。例えば「補足面を16等分したそれぞれの面の中心で測定した風速の平均値が0.2m/s以上、かつそれぞれの面の中心における風速が、平均風速の1/2以上~1.5倍以下」という点や、「換気区域とその境界における気流が全てプルフードに向かって流れる」といった性能が必要となります。
また、開放式のプッシュプル換気装置の場合には、「吸い込み風量が吹き出し風量よりも大きくなるよう、風量の調節を行うこと」が必要となります。
このように、細かく性能要件などが定められていることから、装置の設計・施工については高度な知識と技術が必要になります。
「特定化学物質障害予防規則」は「特化則」と略されることもありますが、これは労働安全衛生法の特別規則のひとつです。正しく取り扱うことが求められる「特定化学物質」を扱う作業者の健康・安全を守るために定められた規則です。特定化学物質は「第1類物質」「第2類物質」「第3類物質」の3つに分かれており、下記のような分類となっています。
特定化学物質障害予防規則における主な措置の概要は下記の通りとなっており、作業者の健康や安全を守るために対応することが求められます。
発散抑制措置 (第1類物質および第2類物質) |
特定化学物質のガスや蒸気、粉じんの発散源を密閉化、局所排気装置を設置する、プッシュプル型換気装置を設置するといった対応によって、空気中へ発散することを抑制するといった対応を行う。 |
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漏えいの防止措置 (第3類物質等) |
第3類物質等を製造・取り扱う設備の腐食防止やバルブなど密閉方向を表示する、送給原材料の表示を行うほか、計測装置や警報装置などを設置することによって、漏えい防止措置を行う。 |
作業主任者の選任 (第1類物質、第2類物質、第3類物質) |
一定の資格を持つ特定化学物質作業主任者による作業方法を決定する、労働者の指揮や排気装置などの点検、防護具における使用上の監視などの職務の実施を行う。 |
作業環境測定の実施 (第1類物質および第2類物質) |
6ヶ月毎に1回、特定化学物質の空気中の濃度測定・評価を行い、作業環境の状況に応じ、必要な改善措置を実施する。 |
健康診断の実施 (第1類物質および第2類物質) |
雇い入れまたは配置換えの際、およびその6ヶ月ごとに、特定化学物質の種類における検診項目について健康診断を実施する。 |
排気装置の設置は、さまざまな法律で規定されています。そのため、有害な化学物質などを扱う作業環境をかかえる事業主は、排気装置の設置とともにいくつかの届出を行う必要があります。
排気装置の設置に必要な届出を、一覧にしてまとめました。届出をする際の注意点や、代行の対応可能なメーカーの情報もご紹介しています。是非チェックしてみてください。
それぞれ排気装置の設置場所が違えば、機器の導入の際に検討するべきポイントも変わってきます。ここでは「製造現場」「研究現場」「塗装現場」それぞれの設置場所に合わせて、排気装置メーカー3社をご紹介します。
導入を考えている場所と排気装置の特徴を見比べて、自社に合った排気装置選びの参考になさってください。