3Dプリンターは印刷プロセス中に刺激物を含む煙などの有害な蒸気が発生する可能性があり、安全に運用するためには十分な換気や煙排出システムが重要となります。
本記事では、作業者の健康を守るための基礎知識や、設備導入のポイントを解説します。
3Dプリンターの稼働中は、材料の加熱や硬化による有害物質の発生リスクに注意が必要です。たとえばFDM方式でABSフィラメントを使用する際などには、VOC(揮発性有機化合物)や超微粒子が放出されます。光造形方式の場合でも例外ではなく、未硬化レジンや研磨工程で生じる微粒子の飛散には警戒しなければなりません。
これらの物質を長期的に吸入すると、頭痛や呼吸器系への影響、さらには皮膚感作(アレルギー)などを引き起こすおそれがあります。安全な環境を維持するためには、局所排気装置の設置や有機ガス用防毒マスクの使用といった対策が不可欠です。
作業場の換気設備には、部屋全体の空気を入れ替える「全体換気装置」と、発生源をフードなどで囲って高効率で吸引・排出する「局所排気装置」があります。有害なガスや微粒子の拡散を根本から防ぐには、発生源の近くで処理を行う局所排気装置の導入が有効です。
光造形後の洗浄工程などでIPA(イソプロピルアルコール)をはじめとする有機溶剤を使用する場合、労働安全衛生法に基づく有機溶剤中毒予防規則(有機則)の対象となり、局所排気装置の設置が原則として義務付けられます。
1日の使用量が許容消費量以下であれば設置義務が緩和される条件もありますが、現場の気積(部屋の容積)や床面積によって適用基準が異なる点に注意が必要です。詳細な適用範囲については、管轄の労働基準監督署や専門業者へ事前に確認することをおすすめします。
※参照元:e-Gov法令検索/第二章 設備(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000036/)
※参照元:e-Gov法令検索/第二条(https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000036/)
排気装置による対策は、HEPAフィルターで粒子を捕集し、活性炭フィルターでVOCを吸着する二段構成が理想的です。具体的なシステム構成としては、専用ユニットとダクトで排気を行う「ダクト式排気システム」や、排気と同時に周辺の空気をろ過する「空気清浄機併用方式」などが挙げられます。
コストを抑えた「自然換気+サーキュレーター」という手段もありますが、企業における安全性確保の観点からは、専門設備の導入が適しています。
実際に局所排気システムを導入・設計する際は、いくつか注意すべきポイントがあります。まず、装置を確実に機能させるため、プリンターや洗浄槽といった発生源の直近に排気口を設け、毎秒0.5メートル以上の制御風速を確保することが重要です(※)。あわせて、ダクトは可能な限り短くして曲がりを少なくする点や、排気口が隣家に向かないように配慮するなど、設置環境に応じた工夫も求められます(※)。
※参照元:ShareLab(https://news.sharelab.jp/3d-printer-health-guide/)
※参照元:SK本舗(https://skhonpo.com/blogs/faq/3d-printer-ventilation-system-setup)
3Dプリンター運用における排気装置の導入は、作業者の健康を守るとともに、企業としてのコンプライアンスを維持するために欠かせない要素です。
しかし、自社の作業環境や法令(有機則など)に適合した局所排気システムを構築するためには、毎秒0.5メートル以上の制御風速の確保や、効果的なフィルター処理、適切なダクト配管といった高度な専門知識が求められます。さらに、複数台のプリンターを本格的に運用する現場であれば、集中排気システムの導入も検討しなければなりません。
安全で確実な作業環境を整備するためにも、まずは専門の排気装置メーカーへ相談することが解決の第一歩となります。
それぞれ排気装置の設置場所が違えば、機器の導入の際に検討するべきポイントも変わってきます。ここでは「製造現場」「研究現場」「塗装現場」それぞれの設置場所に合わせて、排気装置メーカー3社をご紹介します。
導入を考えている場所と排気装置の特徴を見比べて、自社に合った排気装置選びの参考になさってください。