本記事では、局所排気装置の設計や運用に欠かせない「圧力損失」について、基本的な考え方から計算時の注意点まで詳しく解説します。
圧力損失は、空気の流れを弱める抵抗力のことです。圧力損失が大きくなると抵抗力も増加し、小さい場合は抵抗も少なくなります。空気の流れに勢いがある場合は、圧力損失が小さいと考えられます。
圧力損失は、ダクトの長さ、形状、素材、フィルターなどの要素によって変わってきます。長いダクトや曲がり角が多いと、圧力損失が増大し、フィルターが汚れていると、通過する空気の流れがさらに阻害されるからです。圧力損失が大きくなると、風量が不足し、装置の機能が低下するおそれがあります。有害物質の捕集効率が低下し、作業環境の管理に支障をきたす可能性も考えられます。
圧力損失は、ダクトや部品の特性(長さ・直径・曲がり角の有無など)に基づいて算出されます。一般に、ダクトが長くなるほど、また曲がり角が多くなるほど、圧力損失は大きくなります。
この損失を抑えるには、ダクトの直線部分をできるだけ長く確保し、曲がり角を減らす工夫が有効です。また、フィルターの汚れや詰まりは圧力損失を増加させる原因となるため、定期的な点検と清掃が欠かせません。
圧力損失の算出には、「圧力損失曲線」を用います。縦軸に圧力損失(Pa)、横軸に風量(㎥/min)をとり、目的の風量における損失値を確認します。この数値をもとに、システム全体の設計や機器の選定を行っていきます。
圧力損失の計算は煩雑になりがちですが、ダクト部材選定ソフトを活用すれば、作業効率が大幅に向上します。計算ソフトでは、室内機の機種やフィルターを選択するだけで、最適な部材の組み合わせや圧力損失を迅速に確認できます。手作業による計算と比べて、作業時間の大幅な短縮が可能です。
ファンを選ぶ際は、システム全体で発生する圧力損失に見合った風量を確保できる機種を選定することが重要です。圧力損失に対して性能が不足しているファンを用いると、風量不足や運転効率の低下が発生し、結果としてエネルギーコストが増大します。
ファンについては、以下のページで詳しく解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
ダクトの設計は圧力損失に影響を及ぼすため、綿密に行うことが重要です。直線的で広いダクトを使用し、曲がり角や急激な方向転換を減らすことで、圧力損失の抑制につながります。また、ダクト径も用途に応じて選定する必要があります。
ダンパーを適切に調整することも、圧力損失を管理するために重要です。ダンパーが閉じすぎていると風量が減少して圧力損失が増加するため、風量維持のために開度の調整が求められます。
自社での設計や計算が難しい場合は、専門業者に相談するのも有効です。経験豊富な業者であれば、圧力損失を抑えるためのアドバイスや、適切な機器選定をサポートしてくれます。
圧力損失の計算は、局所排気装置の設置において重要な工程です。計算ソフトの活用や専門業者への相談により、計算と設計を適切に進めることが求められます。
当サイトでは、排気装置メーカーごとに製品情報を掲載しています。実際の設置事例や基礎知識も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
それぞれ排気装置の設置場所が違えば、機器の導入の際に検討するべきポイントも変わってきます。ここでは「製造現場」「研究現場」「塗装現場」それぞれの設置場所に合わせて、排気装置メーカー3社をご紹介します。
導入を考えている場所と排気装置の特徴を見比べて、自社に合った排気装置選びの参考になさってください。